たとえばあなたが
もともと、この地下室以外の場所で計画のことを話さないと決めたのは千晶だった。
「でも今日の話の内容は、地下室じゃなくてもいいだろ」
1秒でも1分でも長く、この電話を遅らせたい。
そんなちっぽけな時間稼ぎも、苛立ちを募らせた千晶には通用しなかった。
千晶は革の手袋をはめたまま、テーブルをバンッと叩いた。
「絶対いや!」
「なんでだよー」
「壁に耳ありって言葉、知らないの?そんなこと思うんだったら早く誘い出して、彼女とあったかいカフェにでも行けばいいでしょ」
「彼女って言うな」
「べつに恋人とかの意味じゃないわよ、女性としての彼女。意識しすぎなんじゃないの?」
「トラウマなんだよ!」
崇文は勢いにまかせ、閉じていた携帯を再び開いた。