たとえばあなたが
2時間後、図らずも、千晶の思惑通りに事は運んだ。
「もうほんと感激ですぅ、石田さんのほうからお誘いいただけるなんて~」
「あは、はは…」
崇文は今、千晶といた地下室を出て、新宿駅近くのカフェで中西礼子と向かい合っていた。
礼子は以前と何ひとつ変わらず、人間離れした化粧と香水で店内の客の視線を一身に集めているにもかかわらず、それを気に留める様子はなかった。
(…早くも帰りたくなってきた…)
『あそこのカフェなら、ジャスミン茶がおいしいわよ』
と、千晶に言われて注文してみたものの、
(ジャスミンの香りってどれだよ!)
予想していたとはいえ、やはり礼子の香水は強烈だった。