たとえばあなたが
崇文はそのまま、わざとらしいほどの呆れ顔を作って、礼子の話が終わるのを待つことにした。
「でもね石田さん、私ぃ、石田さんの気持ちには応えられないんですぅ」
(…そうですか…って、誰も告ってねぇし)
「だってぇ、私…」
思わせぶりな礼子の上目遣いも、崇文には何の効果もなかった。
しかし次に礼子が発した言葉は、強烈なインパクトを崇文に与えた。
「私ぃ、婚約者がいますから」
「……!」
崇文は、耳を疑った。
「こ…婚約者…?!」
「ええ、だからぁ、申し訳ないけど、石田さんのお気持ちにはぁ…」
(マジかっ!!)
「あ…あーいやぁ、そうですか、婚約者が!それはそれは、おめでとうございます!」
崇文は、店中に響き渡る大声で、礼子の婚約者の存在をアピールした。