たとえばあなたが



崇文はそのまま、わざとらしいほどの呆れ顔を作って、礼子の話が終わるのを待つことにした。



「でもね石田さん、私ぃ、石田さんの気持ちには応えられないんですぅ」

(…そうですか…って、誰も告ってねぇし)

「だってぇ、私…」

思わせぶりな礼子の上目遣いも、崇文には何の効果もなかった。

しかし次に礼子が発した言葉は、強烈なインパクトを崇文に与えた。



「私ぃ、婚約者がいますから」



「……!」

崇文は、耳を疑った。



「こ…婚約者…?!」

「ええ、だからぁ、申し訳ないけど、石田さんのお気持ちにはぁ…」



(マジかっ!!)



「あ…あーいやぁ、そうですか、婚約者が!それはそれは、おめでとうございます!」

崇文は、店中に響き渡る大声で、礼子の婚約者の存在をアピールした。




< 244 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop