たとえばあなたが
崇文が軽く手を挙げて合図をすると、中西もすぐに気づいて手を挙げた。
「突然お呼びして、すいません」
「いやいや」
以前と変わらないがっしりとした体を機敏に動かして、中西は足早に席までやって来た。
「今日はひとりなのか」
「はい」
「あっそう」
中西は店員にコーヒーを注文した。
「いやぁびっくりしたよ。キミ、礼子と知り合いなの」
「はい」
「あいつ、ちゃんと働いてるの」
「それはもう、バリバリと」
「あっそう」
中西は、ドカッと座るなりタバコに火をつけた。
「…で、何だっけ。あいつの婚約者についてだっけ?」
そう言って中西は、胸ポケットから1枚の写真を取り出した。