たとえばあなたが



崇文とは先週以来、言葉を交わしていない。

千晶のほうから一方的に無視していたのだ。

事の発端は、崇文が千晶に隠し事をしたことにある。



先週、中西礼子と会ったときのことを、崇文が何も話してくれないことが不満だった。

戻って来たのが遅かったこともあやしい、と千晶は思っていた。

絶対に、核心に触れる何かがあったはず。



ところが、どんな話をしたのか、なぜそんなに時間がかかったのか、何度聞いてもはぐらかされる。



『話してくれなきゃ行動できない』

と千晶が言っても、崇文は視線を合わせないまま、

『とくに話すようなことがなかったんだ』

と繰り返すばかりだった。



(…そんなはずないのに…!)

腹を立てた千晶は、向こうが全部白状するまでは、絶対に口をきいてやらないと決めた。




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