たとえばあなたが
『…もしもし、千晶?』
「……」
『まだ怒ってんのかよ~』
電話の向こうで、勘弁してくれよ~、とすがるような声で崇文が言う。
「……何の用よ……」
冷たい物言いには自信がある。
しかも朝の低血圧も手伝って凄みを増した千晶の声は、崇文を怖気づかせた。
『あ…あのさ、萌ちゃんのメール、見た?』
「メール?」
『見てないんだったら見て、また連絡して。じゃね』
「あっちょっ…」
ツーツーツーッ…
長話は禁物と悟ったのか、引き止める間もなく電話は切れた。