たとえばあなたが
萌が、よいしょ、と土鍋を抱えて、乾いたタオルで拭きはじめた。
萌の細い腕では土鍋が落ちてしまいそうで、千晶も手を貸した。
「普段こんなに大きいお鍋使わないから、出番があってうれしい」
と喜ぶ萌の顔を至近距離で見ると、改めてかわいいと思った。
何よりも、白くて柔らかそうな肌が羨ましかった。
千晶の肌質は、どちらかというと引き締まっている。
格好いい、と萌は言ってくれるけれど、お世辞だということは百も承知だ。
「…萌ちゃんってさ…」
「ん?」
「毛穴がないのね」
ツルンとしていて、まさにゆで卵。
とても30過ぎとは思えないハリ。
さらに、近づいて初めてわかるほど薄くつけられた香水の品の良さ。
これで、どうして彼氏ができないのか不思議だ。
「世の中の男って、本当に見る目がないわ」
千晶がため息交じりに言うと、萌はまた、
「ふふ」
と笑った。