たとえばあなたが
リビングのテーブルの中央で、ガスコンロに乗せられた土鍋が今日の主役。
その主役を囲むように座った千晶たち3人の視線は、鍋の中身に集中していた。
「……まだ?」
「まだ」
「でも超いいニオイ~」
「でもまだ」
崇文は、こういうところに細かい。
鍋にしろ焼肉にしろ、彼なりのこだわりがあるようだった。
(全部やってくれるから助かるといえば助かるけど、めんどくさいといえばめんどくさいのよね)
「いいか、カレー鍋というのはだな…」
また始まるぞ、と千晶は思った。