たとえばあなたが
カレー鍋は崇文の好物だ。
「野菜にしっかりカレーが染み込んで、しな~っとなってから食べるのがうまいんだ!」
もう聞き飽きた【こだわり】。
チラリと萌を見ると、千晶と同じく痺れを切らしているようだ。
崇文の言葉に耳を貸さず、じーっと鍋を見つめるその目は、完全に飢えていた。
「―…しな~っとなってから…あっ!」
「えーい!食べちゃうぞっ!!」
言うより先に、萌の箸が鍋に突っ込まれていた。
(きたっ!)
便乗せずにはいられない。
「私もっ!」
千晶が箸を鍋に入れると、あ~っ、という崇文の嘆きが、虚しく響いた。
「ぐだぐだ言ってないで、タカちゃんも食べなさいよ」
「そうよ、鍋奉行なんて必要ないんだから!」