たとえばあなたが
鍋をつつくと、カレーとダシのいい香りが、さらに広がった。
「…わかったよー…」
一度手をつけられてしまっては、もう奉行の出る幕はない。
さすがの崇文も、しぶしぶ箸を手にした。
「おいしいでしょ?」
と萌が言うと、崇文は少し間をあけて、ゆっくり頷いた。
「うまいね」
野菜にも肉にも、もう充分にカレーの味が染み渡っている。
「ちょうど食べごろだったね」
と千晶が言うと、崇文は少し不満げな顔をしたけれど、
「ま、これはこれで」
と強がった。
「何よそれ、うまいって言ったくせに」
「だから、これはこれでいいって言ってんだろ」
「素直じゃないねー!」
「おめーうるせーよ」