たとえばあなたが



萌と楽しそうに話しながら鍋をつつく崇文の表情。

リラックスしきっていて、傍から見ると幸せそのものだ。

そして、それを眺める自分の表情もきっと…―



「千晶、早く食べなよー」

「あ、うん。いただきまーす」



時効になったときの悔しさを、忘れたわけではない。

犯人を見つけたいという思いも、和子の事件が絡まったことによって強まった気すらしている。



だけどそこに、大切な人たちの存在が加わってしまった。



自分たちがしていることを知ったら、きっと萌や小山の笑顔は消えてしまう。

それどころか、関係者としてふたりに迷惑をかける可能性もある。

そんなことにならないようにと決めた約束だったのに…―



長い年月が、確実に千晶の心の傷を癒し始めていた。








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