たとえばあなたが



崇文のやさしい手の感触は、昔から変わらない。



「千晶」

「ん?」

「やめても、いいんだぞ」

「え?」



顔を上げると、崇文が哀れみを含んだ目で千晶を見ていた。



「…どうして…」

「お前、小山さんと一緒にいたんだろ?だったら過去なんて忘れて、幸せになればいいじゃないか」

(幸せに…なればいい…)



『どんな人間にだって幸せになる権利はある』…―



小山の言葉が頭をよぎった。

クリスマス前のデートの夜、不安で押しつぶされそうになっていた千晶に、小山は力強く言った。




< 301 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop