たとえばあなたが



そうなのだろうか、本当に。

ひとりだけ生き残ってしまった自分にも。

そして、そうさせた犯人に復讐することばかり考えている自分にも、幸せになる権利はあるのだろうか。

だとしたら、今が、そのときなのだろうか。



だとしたら…―

「私…私は…―」



ピリリリリリッ



千晶の言葉を遮るように、ソファの上に無造作に置かれていた携帯が鳴った。

耳慣れない着信音に、千晶の体が思わずビクリとした。

そしてそれが、千晶を現実の世界へ引き戻してくれた。



(私、今…)

何て言おうとした…?




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