たとえばあなたが



「こんな時間に友達と遊ぶこと、よくあるの?」



刑事の視線が少し鋭くなったのを感じて、崇文は目をそらした。



「…別に」



説教のひとつでもされるかと覚悟したけれど、刑事はそれ以上、何も言わずに、また下を向いてメモを見た。



「どうして向かいが変だと思ったの?」



「…玄関が開けっ放しになってて、でも誰も出入りしてなかったから」



「なるほど。それで、中に入ってみた?」



崇文は、あの家に足を踏み入れたときの、全身が強張る感覚を思い出した。



「……玄関ちょっと入ったとこまで…」



少し声が震えた。



すると、右隣に座っていた大輔が、そっと崇文の腿に手を置いた。



たったそれだけで肩の力が抜けて、崇文は、不覚にも涙がこぼれそうになるのを必死でこらえた。



崇文の心境を察して、刑事もいたわるように、



「そうか、大変だったね」



と、やさしく言った。




< 31 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop