たとえばあなたが
小山は、乗客があまりいない座席で、ぼんやりと窓ガラスに映る自分の顔を見た。
あの頃に比べて、ずいぶん変わった。
顔に深く刻まれたシワと日に焼けた肌の黒さは、過酷な肉体労働をこなしてきた証だ。
むろん、労働で変わったのは顔だけではない。
自然についた筋肉も、同年代のサラリーマンにも一目置かれるほどの肉体美を作り上げていた。
もう、あの頃のただひょろ長いだけの人間ではない。
こんなにも、自分は変わった。
それほどまでに年月が経っているというのに、いつまでこんなことを考えながら生きて行くのだろう。
もう、忘れてしまいたい。
あの頃のことは。
だからもうこれ以上、誰も邪魔をしないでくれ。
誰も、思い出さないでくれ…―