たとえばあなたが



崇文は、ぎゅっと目を閉じて、呼吸だけに意識を集中していると、そのまま眠ってしまいそうな感覚に陥った。



これからいつまで、この不安が続くのか。



それを考えると、どっと疲れが押し寄せてきた。



この眠気は、現実逃避なのかもしれない。



目が覚めたら、全部夢だった…―



そう願う気持ちが、今はなによりも強い。



夢ではないと、わかっていても。



そして、崇文が深く長い息を吐いたとき、廊下でバタバタと慌しい足音がした。



崇文がその音を聞いて目を開けると、



「鈴木さん!」



と、若い刑事が血相を変えてリビングに飛び込んできた。



大輔と話していた『鈴木』と呼ばれた刑事が、鋭い目つきでドアに顔を向けた。




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