たとえばあなたが



それはそのまま、あの凄惨な殺人現場に足を踏み入れることを意味する。



朋美が小さく悲鳴を上げて、震える手で顔を覆った。



いくら刑事たちがついているからといって、身内として放って置くわけにはいかない。



崇文がソファから立ち上がると、大輔も同時に立ち上がって、



「お前たちはここにいなさい。お父さんが見て来るから」



と、朋美と崇文に言った。



「でも…」



もう、夢ならいい、などと言っているときではない。



崇文は、強い目で大輔を見て言った。



「俺が行くから、お父さんはお母さんについててやって」



崇文は、足がすくむ気持ちを押して、リビングを後にした。




< 35 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop