たとえばあなたが



家の前の道路は、まるで昼間の繁華街ように明るく、騒がしかった。



野次馬のざわめきと、警察官の怒号。



それに交じって、遠くから少女の泣き喚く声が聞こえる。



崇文は、『木村』と書かれた向かいの家の表札の前で立ち止まった。



(ここを通れば、またあの光景なんだ…)



思わず躊躇する。



玄関先の警察官は、すでに崇文を関係者として認識しているようだった。



玄関をふさいでいた体を横にずらして通路をあけ、崇文に軽く会釈までした。



今さら引き返せない。



崇文は下唇を噛みしめて、勢いよく表札の横を通り抜けた。



家の中に入ると、外の騒音がいくらかシャットアウトされ、泣き声がますます大きくなった。



(台所か…)



いとこたちが崇文の家を熟知しているように、崇文もまた、この家の構造を知り尽くしている。



迷うことなく、声の聞こえるキッチンへ歩を進めた。




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