たとえばあなたが
松田のふたりめの被害者となったのは、色白で細身の、背の高い青年だった。
年齢は松田のひとつ下で、1990年当時22歳。
松田とは静岡県の浜松駅近くにある飲み屋で、偶然知り合った。
カウンターでひとりで酒を飲んでいた松田に、青年が声をかけてきたのがきっかけだった。
「ここ、いいですか」
極端に人目を避けていた松田は、突然声をかけてきた青年に戸惑いながらも、
「…どうぞ」
と、横の座席に置いてあったボストンバッグを床に置いた。
浜松に来てから数ヶ月経つ今も定住する場所を持たない松田は、どこへ行くにも荷物を全て持ち歩いている。
「出張、ですか?」
青年は、床に置かれた大きなバッグを見て言った。
「あー…まあ、そんなところです」
「ふぅん、大変ですね」