たとえばあなたが
―…キッチンへ辿り着く、その数秒の間。
崇文は、近づく少女の声を聞きながら、ひとつの覚悟を決めた。
(俺はきっと、これからあの子と暮らすことになる)
キッチンへ続く廊下が、いつもよりも数倍長く感じた。
(あの子が俺の、妹になるんだ)
淀んだ空気が、廊下に渦巻いていた。
(俺が…)
キッチンの入口では、鈴木刑事と、見たことのない若い大柄の刑事が、下を見ていた。
(俺がこの子を、守るんだ!)
彼らの視線の先には、少女がぺたりと座り込んで、天を仰いで泣き喚いていた。
「…千晶っ…!」
崇文は、狂ったように泣き叫ぶ少女を、後ろから抱きかかえた。
(俺が守ってみせる…!)