たとえばあなたが



―…キッチンへ辿り着く、その数秒の間。



崇文は、近づく少女の声を聞きながら、ひとつの覚悟を決めた。



(俺はきっと、これからあの子と暮らすことになる)



キッチンへ続く廊下が、いつもよりも数倍長く感じた。



(あの子が俺の、妹になるんだ)



淀んだ空気が、廊下に渦巻いていた。



(俺が…)



キッチンの入口では、鈴木刑事と、見たことのない若い大柄の刑事が、下を見ていた。



(俺がこの子を、守るんだ!)



彼らの視線の先には、少女がぺたりと座り込んで、天を仰いで泣き喚いていた。



「…千晶っ…!」



崇文は、狂ったように泣き叫ぶ少女を、後ろから抱きかかえた。



(俺が守ってみせる…!)











< 37 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop