たとえばあなたが
【木村さんは担当として、毎日この絵を見ていてどう思われますか?】
やっとレポーターに話をふられると、千晶はぎこちない笑顔を作った。
【え…っと、雄大な自然がまるで目の前にあるようで、とくにこの浜辺の作品は、窓から外を見ているような気にさせてくれるので気に入っています】
きっと事前に答えを考えてあったのだろう。
千晶の棒読みのコメントに、萌が隣でニヤニヤしていた。
それを見逃さなかったレポーターが、すかさず、
【佐山さん、楽しそうに木村さんを見てらっしゃいますねぇ】
と投げかけると、萌はついにプッと吹き出して、
【緊張してる彼女が珍しくて】
と笑った。
千晶はそれを聞いて、顔を真っ赤にしながら、やはり笑っていた。
じゃれ合うふたりの様子は、穏やかな休日の午後のお茶の間に、微笑ましい時間を提供していた。
それでも、その空気を松田に届けることはできなかった。