たとえばあなたが
『あなたが自首しないなら、私が警察に全てを話す。殺人犯が、生き残った娘のそばをうろついてるって言うわ』
美佐が働くあのカフェで、和子は松田にそう言ったという。
「だから殺した」
「……」
絶句している崇文を見て、松田はクツクツと笑った。
「そんなに驚くことか。ならもっと教えてやろうか。最初は千晶のことも殺すつもりだったんだよ」
松田は、ふぅっと息を吐いて、遠い目をした。
「あの子に気があるフリをして、さんざん弄んで捨ててやるつもりだった」
「…おまえ…!」
「でもできなかった」
崇文に口を挟む隙を与えまいとするように、松田は続けた。
「千晶は、あまりに礼子に似すぎていた」
そい言ったとき、松田の表情が苦しそうに歪んだ。