たとえばあなたが
あれから20年。
長い歳月が、人を変えた。
時間は、深い憎しみさえも愛に変えてしまう力を持っていた。
殺してもなお憎かった上司の娘を愛してしまった松田。
家族を殺した犯人を愛してしまった千晶。
崇文は、その事実を千晶が知ったらと想像すると、胸が詰まった。
知らないほうがいい真実もあるのかもしれない。
けれど、それは考えてはいけない。
どうするか決めるのは、自分ではない。
どんな結末が訪れようと、自分は全てを見届けるためにここにいるのだ。
崇文は、自分にそう言い聞かせた。
「…千晶を呼ぶよ」
ポケットから携帯を取り出す崇文に、松田は何も言わなかった。