たとえばあなたが



「見つけた…?」

『例のヤツ…松田聡って男だった』

「マツダサトシ…。タカちゃん、今その人と一緒にいるの?」

『ああ』

「え…でも小山さんと打ち合わせじゃ…」



なぜ、マツダサトシなんて人と一緒にいるの?

タカちゃんが一緒にいるのは、小山徹でしょ。

マツダサトシって誰なの?

喉元まで出かかったその言葉を、千晶は口にすることができなかった。



『例の地下室に、松田といるから』

千晶の返事を待たずに電話は切れた。

耳元で、ツーツーと抑揚のない音が繰り返される。

千晶は携帯を充電器に戻したあと、しばらく動けなかった。

動悸が治まらない。

全身が心臓になったようだった。



千晶はひと呼吸置いて、ようやく席を立った。



(…行かなくちゃ)

切り替えがうまくいかない頭を必死に働かせて、千晶は今自分がすべきことを考えた。



この5年間、崇文とふたりで探してきた人物を、崇文が見つけた。

ずっと探していた、どれだけ憎んでも足りないほど憎い犯人を見つけたと、崇文が言った。




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