たとえばあなたが
突き刺すような冷たい風が、容赦なくビルの合間を吹き抜けていく。
寒空の下、駅までの道のりを歩きながら、千晶は考えていた。
もしマツダサトシが小山だとしたら、と。
小山と出会ってからの日々を思い起こしてみる。
あのときは、どうだった…?
アートフィールのクレーム処理をした、あの日。
会社に戻ったとき、小山は席にいなかった。
萌に聞くと、来客中だと言っていた。
だけど小山に後で会ったとき、小山はたしか、部長と話していたと言った。
なぜ?
仕事関係の来客だったのなら、そんな嘘をつく必要はない。
もし客というのが、和子だったとしたら。
小山の顔に見覚えがあって、それを確かめるために和子が会社を訪問していたのだとしたら。
それを隠すために、嘘をついた…?
『秋桜』を『あきざくら』と読めたのも、偶然ではない。
きっと、最初から知っていたのだ。