たとえばあなたが
それから、そのあとの会議室でも不自然だった。
小山が買って来た、ブルーベリーのベーグルとシナモンの香りのベーグル。
小山は迷わずブルーベリーを千晶に渡した。
千晶は、ブルーベリーが好きでシナモンが苦手だ。
小山はそれを知っていて、無意識に選んだのだとしたら。
出会ったときから抱いていた、得体の知れない親近感もそうだ。
小山が醸し出す雰囲気のせいだと思い込んでいたけれど、そうではないかもしれない。
千晶の頭のどこかに、昔、小山に遊んでもらったときの記憶があったからだとしたら。
だから、親しみを感じたのだとしたら。
そう、あのときもそうだ。
初めてふたりでタクシーに乗ったとき。
小山は東京は初めてだと言っていたわりに、運転手への指示が的確だった。
初めてではなかったのだ。
昔、住んでいたのだ。
東京に。
この街に…―