たとえばあなたが



「外、さっきまですっげー雨でさ。そこのコンビニでタオル買ったはいいけど、寒くて震えが止まんねぇ」

「…そう」

離れていてもわかるほどに、崇文の体はガタガタ震えていた。



「お前、こういうときはさぁ、あったかいお茶でも淹れましょうかとか言えよ」

「…タカちゃん」

「だからお前はダメなんだよ、もっと萌ちゃんの女らしさを見習って…」

「タカちゃん!」



崇文も自分と同じなのだと千晶は思った。

この現実を、どう受け止めればいいのかわからない。

その戸惑いが、話を本題に持っていくことを拒んでいる。



千晶の目も崇文の言葉も、向くべき方向を向いていなかった。



けれどいつまでも避けていられない。

どうでもいいことばかりを口走る崇文の言葉を遮って、千晶は視線をゆっくり横へずらした。




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