たとえばあなたが
そして今、千晶は銃口を松田に向けた。
引き金を引けば、松田の命は終わる。
松田は、赤く血塗られた手に握られた銃を見つめた。
「…そうだ、千晶、そのまま引き金を引け」
―…キミは、簡単に死んだりしちゃいけない。苦しんで苦しんで、もがきながら限界まで泣き叫んで……―
愛する人に、誰がそんなことを思うだろうか。
けれど千晶に自分を殺させるには、そう言うしかなかった。
自分への想いを、断ち切らせるしか。
「俺が、お前の家族を奪ったんだ!あのときの気持ちを思い出せ!」
千晶の首からは、とめどなく血が流れている。
もう助からないだろう。
そう思ったとき、松田の頬を一筋の涙が伝った。
千晶をひとりで逝かせたりはしない。
松田は、その瞬間を待った。