たとえばあなたが
これでいいんだ、と自分に言い聞かせる。
崇文は、死んだ母を前にして泣き叫んでいた、20年前の小さな背中を思い出した。
長かった。
本当に、長い日々だった。
(やっと今日、何もかもが終わるんだ)
きゅっと唇を噛み締めて俯くと、急に胸が詰まって、崇文はこみ上げる涙をこらえた。
この涙は、今日までの運命を思ってのものなのだろうか。
それとも、これからの運命を思ってのものなのだろうか。
(今日までの…運命…)
自分たちの身勝手な目的のために、たくさんの人を犠牲にした。
傷ついた礼子を、兄が救ってくれることを願う。
命を奪われた和子が、安らかに眠っていることを願う。
これから真実を知る萌が、立ち直って幸せになってくれることを願う。