たとえばあなたが



千晶の全身が、とりわけ首から下が真っ赤に染まっている。

もう歩くこともできない体は、階段を一段ずつ、トカゲのように這いながらのぼった。

その右手には、小さな銃が握り締められていた。



階段をのぼりきったとき、通行人が千晶を見て短く叫んだ。

崇文は、自分に気づかずによろよろと立ち上がり歩道へ出た千晶を、黙って見ていた。



千晶、と小さく呼ぶ崇文の声も、周囲のざわめきも、千晶には何も聞こえていないようだった。

どこへ行くつもりなのか、体をふらつかせて歩く千晶を、通行人たちが足を止めて見ている。



やがて、正義感あふれる見知らぬ男が、

「救急車!」

と叫んだ。

そして、それが合図であったかのように、人々が口々に何か大声でわめきながら千晶を取り囲んだ。



崇文はその輪に入ることができずに、1歩下がった場所に立ち尽くしていた。



これが、千晶の選んだ道。



かわいいかわいい妹が選んだ道…―




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