たとえばあなたが
千晶の人生が、終わろうとしている。
「…千晶…」
崇文は、群集を掻き分けて、うずくまる千晶に近づいた。
早く楽にしてやりたいと思った。
早く家族のもとへ…―
「……ちあ……」
パンッ!
―…
一瞬のことだった。
急に上体を起こした千晶は右手の銃で自らのこめかみを撃ち抜き、そのままのけぞって仰向けに倒れた。
「…千晶っ!」
崇文は、立ちすくむ人々を押しのけて千晶を抱きかかえた。
もうほとんどないと思っていた千晶の血がドクドクと流れ、アスファルトに広がる。
崇文は、千晶のこめかみを手の平で押さえ、抱きしめた。
千晶の髪に顔をうずめると、嗅ぎ慣れない血の匂いに混じって、かすかにいつものシャンプーの香りがした。
崇文の手の平の隙間から、止まることを知らない鮮やかな血が流れ続けた。
新宿の街は、物々しい空気に包まれた。