たとえばあなたが



「知らねーよ、こんな奴」

「あ、ちょっと!触らないでくださいよ!」

「うるせー」

まったくもう、と文句を言う後輩を無視して、中西はふたりの遺体に背を向けた。



―…時効が何だって言うんだ。

歳月が過ぎたって、犯罪者は犯罪者。

罪に問えないなんて馬鹿げた話があるもんか。

だからこんなことをしてしまう人間が現れるんだ…―



「見ろ、また犠牲者が増えちまった」

中西は、目の前にあったタバコの自販機をガンッと蹴った。

足の指が痺れて思わず舌打ちをしたとき、バーの中からマスターらしき男が出て来た。



「あ、すんません」

自販機を蹴ったことを咎められるかと構えたけれど、マスターは中西に目もくれずに倒れているふたりに視線を向けていた。




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