たとえばあなたが



それにしてもさ、と萌が言った。

「千晶、どうして研修医の内情に詳しいのよ」

「……」

そこには触れて欲しくなかった、と千晶は思った。

だけど、聞かれてしまったものは仕方ない。

「…マンガで読んだから」

しぶしぶながらも正直に白状すると、萌はあっけに取られて目を丸くした。



(しまった!)

千晶は舌打ちしたい気持ちになった。

(絶対バカにされる!)



その直後、

「あははははは!」

萌は高らかな笑い声を響かせ、

「マンガレベルで話されちゃ困るんですけど!あはははは!」

と、お腹を抱えた。


「ちょっとうるさいよ。周りに迷惑でしょ」

笑い転げる萌をたしなめてみるものの、照れ隠しにしか見えず、どうにも分が悪い。

ここはなんとか丸め込まねばと焦った千晶は、

「と…とにかく私は、もういい歳なんだから研修医なんて半人前とダラダラ付き合ってる余裕がないって言いたいの。とくに萌ちゃんみたいに結婚願望の強い人はね!」

と、取ってつけたような理屈を並べ立てて、その場をしのいだ。

心の中で、全国の研修医さんすいません、と詫びながら。




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