たとえばあなたが
「もうちょっとしたらって…今何時だと思ってるのよ」
「うるせーな」
少年は起き上がりテレビを消して、わざと乱暴にリビングのドアを閉めて、出て行った。
2階の自室へ行ったようだ。
入れ違いに、朋美の夫の大輔が入って来た。
「風呂、いいか?」
「あー…いいわよ。あの子、出かけるみたいだから」
「出かける?もう10時じゃないか」
「だけど、言っても聞かないもの…お父さんからも何か言ってよ」
遅めの反抗期なのか、高校2年になって突然、家族とはろくに口をきかなくなった。
明日は、向かいに住む兄夫妻とその娘ふたりと共に、横浜博覧会に行くことになっている。
息子にも伝えてあるが、彼は覚えているだろうか。
「ちょっと見てくるよ」
父親として、息子が非行の世界に足を踏み入れるのを黙って見ているわけにもいかない。