たとえばあなたが
この店は早朝からデパート前に列ができるほど話題を呼び、先着順に配布した整理券もあっという間になくなった。
開店して間もなく商品は完売。
すでに空っぽの陳列棚には、
【完売】
の立て札と、商品の写真が飾られているだけだ。
(売れるんだから、もっと数を用意しておけよ)
と心の中で悪態をつきながら、崇文は大盛況の中、人を掻き分け必死に出口へと向かった。
休憩室に辿り着き、やっとの思いで椅子に座り、
(…北海道人気って恐ろしいな…)
と一息ついて、現在に至る。
メールチェック中に後ろから覗き込んできた女性は、大催事場とは別フロアの小催事場で企画展を催している取引先の社員だ。
全国のデパートの催事場を回って絵画を売る会社で、崇文が催事場担当になってからも何度も取引がある。
崇文は、この女性が苦手だった。
どう見ても今年37歳になる崇文よりも年上のはずだが、話し方がだらしない。
髪は金色に近い茶髪だし、化粧が濃い。
加えて、香水もキツい。
できれば関わりたくないタイプだった。