たとえばあなたが
こんな店員から絵を買いたい客なんているのだろうか、といつも思う。
もし自分がこんな人に接客されたら、慌てて展示場を後にするだろう。
崇文は、鼻が限界になる前に、
「僕、ちょっと電話しなくちゃいけませんから失礼します」
と言って席を立とうとした。
すると、
「まだいいじゃないですかぁ」
と女性がスーツの袖を引っ張ってくる。
浮きかけた腰が、ストンと椅子に戻ってしまった。
(…勘弁してくれよ、もう~)
と、崇文が泣きそうな気持ちになっていると、女性が、
「今日、カレー食べに行きましょうよ」
と言った。
「…カレー?」
「だってさっき『カレー行くって言ってたのに』って愚痴ってたじゃないですかぁ」