たとえばあなたが
注文した生ビールは、すぐに崇文の手にやってきた。
よく冷えたグラスに口をつけて、ひと口飲む。
「お前もさ、そんなイライラしてる日くらい、酒でも飲んだら?」
崇文はすでに2杯ほど飲んでおり、顔にほんのり赤みがさしていた。
千晶は、明らかにイライラした様子で、
「別にイライラしてないし」
と、イライラした口調で答えた。
「ていうか、タカちゃんのデパートでやってると思ったら、余計にイラッとしたんだよね」
「やっぱイライラしてんじゃん」
「うるさいなぁ。だいたいタカちゃんね、もっと取引先を選んだほうがいいよ」
ケバくてクサい女やら、わけのわからないクレームを入れる女やらとばかり仕事をしていては、松越の品位をが疑われるというものだ。
ところが崇文は、延々と訴え続ける千晶を見てはニヤニヤしながら、気持ち良さそうにビールを流し込んでいた。
「品位、ねぇ」