たとえばあなたが
千晶の言いたいことが、わからないでもない。
たしかに、担当部門のせいで松越のイメージが悪くなるのは避けたいところだ。
それはそれとして、ある1点の事実に千晶が気付いていないようなので、崇文はビールのグラスを手に持ったまま、しゃべり続ける千晶を止めた。
「あのさ、千晶」
「なによ」
「ケバくてクサい女とクレーマーな女って、同一人物だぞ」
千晶の目が見開いた。
「アートフィールの中西だろ?そんなヤツ滅多にいないからすぐわかったよ」
実際、崇文自身も礼子に、
『売れすぎちゃって在庫がなくなりそうなのにぃ、卸し元に頼んでも間に合わないって言うんですよぉ』
と、今の千晶の愚痴を裏付けるようなことを言われたばかりだった。
「卸し元が千晶の会社だってのは知ってたけど、まさか担当までお前だったとはな。奇遇で不運な巡り合わせに乾杯!」
崇文はビールのグラスを、千晶が飲んでいるウーロン茶のグラスにゴツンとぶつけた。
グラリと揺れて倒れそうになったグラスを、千晶は慌てて両手で支えた。