たとえばあなたが
(…くそっ、やる気あんのか、あの女!)
崇文は心の中で、思いつく限りの悪態をつきながら歩いた。
卸し元のせいにしようとする礼子の姿勢が気に入らない。
千晶の必死の説得を知ってしまった今、あんな態度に出られては、千晶がいたたまれなくなる。
(俺だってゆうべはさんざん愚痴を聞かされたあげく飯代まで払わされたんだ。俺の時間と金を返せ!)
百貨店の裏通路の階段を、わざと大きな音を立てながら上がっていく。
明かりの薄暗さとコンクリートむき出しの壁が、老舗百貨店らしい古さを醸し出していた。
やがて9階に着くと、ペンキの剥がれかけた重い扉を開けて、崇文は店内へと入った。
眩しい照明に、少し目を細める。
何度かリニューアルされた店内は、従業員用の裏通路とは違い綺麗に保たれていて、まるで新しい建物のようだった。
崇文は、大催事場の北海道物産展に向かう客で溢れかえるピカピカの店内に足を踏み出し、
「いらっしゃいませ」
と、苛立ちを押さえ、ムリヤリ笑顔を作った。