たとえばあなたが



けたたましいサイレンを響かせながら、数台のパトカーが深夜の住宅街に滑り込んで来た。



あっという間に辺りに非常線が張られ、その周囲にはパジャマ姿の野次馬が群がった。



数人の警察官が、その黒山の人だかりを整理するのに四苦八苦している。



(だったら、もっと静かに来りゃあいいのに)



第一発見者の石田崇文は、自宅の玄関からこっそり外を覗き見た。



夜になるとほとんど人の気配のなくなる、閑静な住宅地。



今は、向かいの家にひっきりなしに警察官やよくわからない関係者らしき人物が出入りしている。



今夜の街は、いつもとは別の顔を見せていた。



「崇文」



と母親に呼ばれてリビングに入ると、50歳くらいの私服の警察官と目が合った。



(…ドラマみたいだな)



さっきまで自分が寝転がっていたソファに、父親の大輔が緊張の面持ちで座っている。



見慣れたリビングルームには、まるで現実離れした、物々しい空気が渦巻いていた。




< 9 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop