冬城町新年会2009→2010
只の人間に過ぎない俺の目からは、豆粒ほどにしか見えないが、何かが夜空に浮かんでいる。

星でもない。

雲でもない。

月でもない。

あれは…。

「人…?」

「人の姿をした人外じゃな」

姫羅木さんが、しゃなり、と一歩歩み出た。

恐らくは緊急事態であろうこんな時でさえ、彼女の身のこなしは優雅ささえ感じさせる。

「年末の事を『年の暮れ』、『暮れが押し迫る』などというじゃろう?…あれはそもそも、一年の終わりになる頃、その土地にやってくる余所者の人外の事を指す言葉なのじゃ…本来の名は『紅霊』…血や炎で土地を赤く染め上げる所から、その名がついたとされるがの…」

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