Fairy Garden〜妖精の庭〜




突然現れた女の子を見てデーダは目を丸くした。

いや、正確にはその女の子の持っているカゴを見て、だろうか。


「あ〜いけない。貰いすぎちゃった」

困ったような表情でそう言う僕にデーダの口元は緩んだ。


何せ、カゴに入っているのは大量のパンだ。しかも焼きたてのほかほか。


デーダはよだれが垂れそうなぐらいカゴのパンを眺めていた。


すれ違いそうになった時、僕はふいにデーダに声をかける。

「あの…そんなにこのパンが食べたいですか?」


顔を覗きながら聞く僕にデーダは言った。


「いや、別に?」


――本当は食べたくてたまらないくせに。


僕はニッと見えないように笑うと、にっこりとした微笑みでデーダに向き直った。


「ライズのパン屋が今、無料で余ったパンを配布してるんです。あまり人がいないのでたくさんくれますよ」


「ほんとか!?」

デーダの目が大きく見開き、輝いた。


信じてる、信じてる。僕だとはバレてないみたいだ。


ほんとバカな奴だな。
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