魔法のことば
 お母さんは仕事を失って以来余裕のなかった自分を客観的に振り返ることができた。

 独身時代の仕事では明るさと笑顔がトレードマークだったのに、主婦生活とつらい離婚、失業、病気だと思い込んでたことも重なり、すっかり暗い表情が顔に固定してしまっていた。

 いくつか面接を受けたがあれじゃ受かる訳無いと今ならわかる。

 会社は雰囲気を明るくしてくれる人を求めているのだ。

 今ならまさおの顔を思い浮かべるだけで自然と明るい表情が出せる。

 お母さんは車で送ってくれた紳士ににっこり微笑んであらためてお札を言うと、颯爽と受付に向かって歩いた。
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