君へ。
No.19
―いっその事、
記憶も 思い出も
全て消去してしまいたい。
「おはよ。凛。」
「あ、おはようさん。」
「何かあったん?」
「何でー?」
「目が腫れてる。」
朝 目覚めたら
目は真っ赤に
充血していて、
腫れ上がっていた。
「昨日、目が痒くてこすってもうてん。」
「ダメやんかー。ばい菌、入るで?」
「ごめんー。」
嘘を付いた。
泣いた事を思い出すだけで
陸と過ごした日々まで、
思い出してしまいそうだったから。
「なぁ、杏」
「んー?」
「・・・やっぱ、何でも無い。」
忘れなきゃ。
そう自分に言い聞かせる度、
胸が苦しくなる。