誘拐犯瞬くんの日記
きっかけ
「おまえもそろそろ彼女つくれよなぁ」
唐揚げを食いながらそう言う涼太は俺の唯一の友達。
茶髪で目がくりっとした涼太は凄くモテる。
会う度に彼女の名前が変わってる気がするけどまぁそれはいいか。
「おまえ顔もいいし背高いし、作ろうと思えば彼女の一人や二人余裕だろ?」
「俺は一夫多妻制反対だから」
「いや! 俺付き合ってる女は一人だよ?」
ケラケラ笑う涼太は女の最大の敵だなぁと思う。
「彼女なんかいらないよ」
彼女なんかいらない。
人と関わりたくない。
携帯の電話帳を開く。
登録されてる電話番号は最低限。
涼太とバイト先とバイト先の人と柴田さん。
必要最低限。
「おまえ無口だし無表情だし、だからだめなんだよ」
「……」
黙って食器を片付ける俺を見て涼太がふっと笑う。
「まーそれが瞬らしいんだけどさー」
でも、と続ける。
「家に来んの俺だけとか寂しくねえの?」
「うん、犬もいるし」
ちらっとソファーの上で眠るシーズーを見る。
「あー……つかそろそろ名前つけろよ」
シーズーを飼って二週間。
まだ名前は決まってない。
< 1 / 161 >