誘拐犯瞬くんの日記
柴田さんは俺の母さんの姉にあたる人。
母さんは俺が10歳の時にいなくなった。
それから俺は柴田さんの家に居候することになった。
柴田さんは妹である母さんのことが心底嫌いなようだった。
男と遊んでばかり、お金は借りたまま返さない、親の葬式にも来ない、挙句俺を押しつける。
当たり前なのかもしれない……。
そんな妹の息子が突然来ても歓迎されるわけもなかった。
別に虐められるとか、虐待とか、そんなことはされなかった。
でも、柴田さん夫婦の目は冷たかった。
俺は大学に行く金は自分で払うと言った。
迷惑ばかりかけてたから……。
「それなら、仕送りするから出てってくれます?」
俺が柴田さんの家にきてからずっと、柴田さんは俺に対して敬語だった。
柴田さんは俺が憎かったわけじゃないと思う。
まぁ憎まれても別にいいけど。
母さんがどこかで知らない男とつくった子供を……受け入れたくなかった?
母さんにも受け入れられなかった俺は、もちろん柴田さんにも受け入れられるわけもなかった。
無口だし、しょうがないよね。