愛読書
亘は悲しい目をして作者と詩織を見た。そして横の空間に耳を傾ける様にするとこう言った。
 「どうやら彼女にはこの世界は生き辛いらしい。だから僕が彼女のもとへ行くことにするよ。」
 亘は本を抱きしめたまま、ベランダの手すりに手を掛けた。
「やめろッ!」
 悠介は走って止めようとしたが、何かに躓き転倒した。
 「悠介、ありがとな。それじゃ。」
 亘はひらりと手すりを飛び越えると、プールに飛び込むくらいの気軽さで飛び降りていった。
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