愛読書
亘―本の外―
井川亘は考えていた。どうすれば彼女に会えるのだろうか、と。書物の中に入る道があればよいのだけれど、生憎僕はその道を知らない。それなら少し遠いが本の中で少女がよく行く街に出掛けてみようか…。まとまらない考えを繰り返していると突然後ろから声を掛けられた。
「何ぼーっとしてんだよ。大丈夫か?もうすぐ次の授業始まるから行こーぜ。」
振り向くと、友人の関悠介が朝から全開の笑顔で立っていた。何も持たずに。
「悠介、荷物は…」
「ああッ!しまった!前の教室に忘れた!」
悠介は面白いほど表情を変えながら叫び、陸上選手のような走り方で教室へと疾走していった。近くで見ていた女子生徒がくすくす笑っている。僕も笑った。
悠介は高校からの友人で、同じ大学に入ってからはいつも一緒に行動している。どこか抜けていて頼りないが、彼の快活でフレンドリーな性格の前ではそんな欠点も愛嬌に変わり、みんなに好かれていた。他人と接するのがあまり好きではない僕も、悠介には心を許していた。
「何ぼーっとしてんだよ。大丈夫か?もうすぐ次の授業始まるから行こーぜ。」
振り向くと、友人の関悠介が朝から全開の笑顔で立っていた。何も持たずに。
「悠介、荷物は…」
「ああッ!しまった!前の教室に忘れた!」
悠介は面白いほど表情を変えながら叫び、陸上選手のような走り方で教室へと疾走していった。近くで見ていた女子生徒がくすくす笑っている。僕も笑った。
悠介は高校からの友人で、同じ大学に入ってからはいつも一緒に行動している。どこか抜けていて頼りないが、彼の快活でフレンドリーな性格の前ではそんな欠点も愛嬌に変わり、みんなに好かれていた。他人と接するのがあまり好きではない僕も、悠介には心を許していた。