愛読書

僕が悠介を信頼している理由は、他にもある。彼は、正義感がとても強く、いざという時には普段からは想像出来ないほどの力を発揮するのだ。例えば、こんな事があった。
高校の頃、クラスにいた不良の私物が盗まれるという事件があった。不良はその時たまたま近くにいた僕を疑い、襟首を掴んで殴ろうとしてきた。誰でもいいから怒りをぶつけたかったのだろう。僕は面倒くさいから殴られてやろうと思い無抵抗でいると、悠介が不良の拳を押さえながら間に入ってきた。
「亘がそんなことする訳ないだろ！そんなに殴りたいなら俺を殴れ！あ、でも俺痛いの苦手だから本気で殴るなよ。」
突然現れた奇妙な介入者の言葉で怒る気を無くした不良はそのまま席に戻っていった。その一件以来僕と悠介は仲が良い。
遠くから悠介の声がする。どうやら帰ってきたようだ。手を振りながら走ってくる。僕も手を振り返す。