【完】キスミーアゲイン
慌ててユキさんを追うと、さっさと食器を運び終えてキッチンから出てきたユキさんが、平然とした顔で戻ってきた。
…な、なんでいきなり食器さげてくれてるんだろう。
ユキさんの突然の行動に頭がついていかない。
「や、あの、食器…」
「流しの所に置いた。食器洗い機あるからそれ使え。終わったらコーヒー持ってきて」
「え、あ、はい」
「…割られると困るしね」
ぼそり、とそう呟いて、ユキさんは書斎に消えていった。
なんだ、食器のため、か。
…って、私は何を期待していたんだろう。
ユキさんが私のために…なんてあるわけないのに、そんなことを一瞬でも思ってしまった自分が恥ずかしかった。
はぁ、と小さくため息をついてからキッチンに向かい、食器洗い機を動かしてコーヒーの準備を始めた。